中国・広州LET物流展示会レポート:5ホールを歩いて見えた中国物流ロボット産業の現在地
展示会レポート / 2026-07-02
2026年6月3日から5日まで、中国・広州の中国輸出入商品交易会展館(広州交易会展館)で開催された「LET-a CeMAT ASIA event 2026」を視察しました。 LETは、中国でも最大級の規模を誇る物流・自動化・ロボット分野の展示会です。会場にはAGV(無人搬送車)やAMR(自律走行搬送ロボット)、自動倉庫、スタッカークレーン、搬送システム、物流ソフトウェア、AIなど、物流に関わる最新技術が一堂に集結していました。 今回は主にAGV・AMR関連のメーカーを中心に2日間、計10時間ほどかけて見学しましたが、それだけでも足が棒になるほどの広さであり、中国における物流ロボット産業の圧倒的な厚みを肌で感じる視察となりました。
1. 「物流」だけで4ホールを使い切る規格外の会場規模
展示会の案内図を見て、まず驚かされるのはその物理的なスケールです。今回のメイン会場はHall 17.1から20.1という巨大な5つの展示エリアに分かれており、それぞれ明確なテーマごとに構成されていました。
- Hall 18.1:AGV・AMR・知能ロボット専用(出展企業は100社近くにのぼる)
- Hall 19.1:物流システム、自動倉庫、搬送設備、仕分け設備
- Hall 17.1:フォークリフト、物流周辺設備
- Hall 20.1:スマートファクトリー、物流システム全体
日本国内の物流展では、ブースの多くをパネル展示や商談スペースが占め、ロボットは限られたスペースでデモ走行を行う光景が一般的です。しかし、広州LETでは展示の思想が根本から異なります。
会場には、ビルの3階建てに相当する高さの巨大な自動倉庫の棚が丸ごと組み上げられ、それに合わせてスタッカークレーンやパレットシャトルが実サイズで稼働していました。模型や動画による紹介に留めず、実際の工場や倉庫に納入される規模の「実機」をそのまま持ち込んで動かす展示スタイルには、中国市場の勢いを象徴するようなすごみがありました。
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2. 標準化された製品群と、その裏にある細分化された差別化
AGV・AMRの専門ホール(Hall 18.1)を歩いていると、一見するとどのメーカーも非常によく似た外観や機構のロボットを展示していることに気づきます。
これは深圳や東莞を中心とする中国の電子部品・ロボットのサプライチェーンが高度に成熟している証左でもあります。モーター、センサー、LiDAR、制御基板、システムソフトウェアなど、ロボット製造に必要なあらゆる基盤技術へ容易にアクセスできる環境があるため、多くの新興メーカーが一定以上の高い水準で製品を形作ることが可能になっています。
しかし、各ブースの担当者(現場には営業担当者というよりも、技術に精通したエンジニア調のスタッフが多く見られました)に詳細を尋ねると、フラットかつ正確に、隣り合う競合他社との細かな差別化ポイントを提示してきます。
- マイナス環境下の冷凍・冷蔵倉庫に対応した耐寒スペック
- 屋外の悪天候や不整地でも走行できるセンサー制御
- 重量の大きい荷物を運ぶための特殊な牽引機能
- 狭い通路での旋回性能や、独自の走行軌道アルゴリズム
作り手からすれば、これほど似た製品がひしめく中でミリ単位の仕様変更や特化型の性能を競い合わなければならない過酷な環境ですが、買い手(ユーザー)の視点に立てば、自社の現場に合致した最適な選択肢を非常に安価に、かつ豊富に選べるというメリットがあります。
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3. 生成AIとの融合:自然言語で自律駆動する自動倉庫のデモ
今回の展示会で、今後の明確な技術トレンドとして最も印象深かったのが、生成AI(自然言語処理)と物理的なロボットの融合(身体性AI / Embodied Intelligence)です。
会場では「AI物流」や「デジタルツイン」をテーマにしたセミナーが数多く開催されていましたが、展示ブースでもその具体的な実装例を見ることができました。
自動倉庫の前に設置されたデモ機では、オペレーターがマイクに向かって、中国語で「ハンディ扇風機をとってきて」と口頭で指示を出していました。従来のように製品の型番や商品コードを手入力する必要はありません。
システム側のAIがその指示(自然言語)の意味を自律的に解釈すると、ビルの3階建てほどの高さがある自動倉庫内から対象のノベルティ(ハンディ扇風機)を特定。連動した垂直リフトによって自律走行する台車型ロボットが上層階まで一気に持ち上がり、対象の棚から正確に商品を入庫・ピッキングして手元まで搬送してくるという実演が行われていました。
また、別のブースではさらに一歩進んだ実売動線とロボットの連動デモも注目を集めていました。来場者が実際に端末から飲み物を注文すると、その決済データを受け取った「人型(ヒューマノイド)ロボット」が、自律的に奥の保管スペースまでドリンクを取りに行き、人間の手で手渡してくれるという内容です。
人間と対話するようなインターフェースでシステムを動かし、人型ロボットが物理的な作業を代替する。こうした世界は、すでに実験段階を終え、実際の商用・物流現場への実装フェーズに入りつつあることを、実機をもって証明していました。
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4. 総括:中国ロボット産業の本質は、個々の「強さ」ではなく「競争環境」にある
2日間、合計10時間にわたって広州の会場を視察して得られた視点は、「どの中国メーカーの製品が優れているか」という個別の品定めだけでは、この市場の本質を見誤るという点です。
現地で目撃したのは、特定の企業が突出している姿ではなく、似たような製品を作る会社が何十社も存在し、その中で絶え間ないアップデートを続けなければ即座に淘汰されるという、極めて激しい市場のダイナミズムそのものでした。
価格競争力だけでなく、機能の細分化、短納期対応、そして生成AIや人型ロボットといった最先端ソフトウェア・ハードウェアの社会実装力にいたるまで、あらゆる要素がこの過酷な競争環境によってハイスピードで磨き上げられています。
日本企業が中国製の設備やロボットを評価する際には、過去の先入観を排し、現地でどのような技術革新が起きているのかを客観的に捉える必要があります。今後もこうした現地視察に基づく一次情報を提供し、日本企業の設備投資や自動化の確実な判断材料となる発信を続けてまいります。