【インタビュー】なぜ創業6年でここまで作れるのか?――Multiway Roboticsに見る無人フォークリフトの進化と深圳スタートアップの開発速度

メーカーインタビュー / 2026-08-13

最大8トンを載せたまま、360°回転し、横方向にも移動する。 高さ16.5mのラックに、幅1.75mの狭い通路からアクセスする。 さらに、傾斜や段差のあるコンテナの中まで無人フォークリフトが入っていき、荷物を積み下ろす。 Multiway Robotics(マルチウェー・ロボティクス)の製品資料を見ていると、私たちがイメージする「既存のフォークリフトを無人化しただけ」の姿ではない機械が次々と登場する。 しかも、この会社が設立されたのは**2019年**のことだ。 なぜ創業からわずか6~7年の若い企業が、これほど多岐にわたる製品群を開発し、世界へ送り出しているのか。 今回は日本市場の担当者に、同社の技術力、現場対応力、そして急速な製品開発を支える背景について話を聞いた。

創業満6年で1,000件超。まず成長速度に驚く

――まず、Multiway Roboticsの概要について教えてください。

Multiway Roboticsは、中国・深圳で2019年に設立された物流ロボット企業です。まだ若い会社ですが、現在ではグループ全体で約200名規模まで成長しています。

設立から約6年間で、世界40カ国以上に事業を展開し、累計1,000件以上のプロジェクトを実施してきました。中国・深圳の本社に加え、日本、韓国、ドイツ、米国などにも拠点を設置しています。日本市場への進出からも約5年が経過しており、現在は日本のエンドユーザー様への直接的な販売やサポートも行っています。

編集部コメント

中国のロボット企業を取材していると成長速度に驚くことは多いが、Multiwayはその典型だ。設立からわずか6〜7年でグローバル40カ国・1,000件以上のプロジェクトを動かしており、非常に速いスピード感で実績を拡大している。

またHPにもある同社の沿革を見ると、この間の展開の目まぐるしさがよくわかる。

2019年にチームが本格始動し、同年中に初代パレット式無人フォークリフトを市場へ投入。翌2020年には中国国内に複数拠点を立ち上げ、資金調達(Aラウンド)からCE認証の取得、海外進出の準備までを一気に推し進めた。

その後も2021年に新型モデルを連発して資金調達(A+ラウンド)を重ねると、2022年には1億元を超える大型調達を完了。同時に四方向シャトルやビジョンソリューション、低温環境向けモデルなど、一気に製品群を広げていく。

2023年には日本・韓国・米国・欧州へ拠点を開設し、2024年に入るとオーストラリアや中東、タイへと進出エリアを広げつつ、冷凍倉庫用やトレーラー積み降ろし用など、現場に合わせた新製品を立て続けに投入した。そして2025年には、1億元規模のB2ラウンド調達と複数の業界賞受賞を果たしている。

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深圳の本社・R&D拠点を軸にグローバルへ広がるサービス網と、ハード(フォークリフト、シャトル、牽引車)からソフト(WMS、RCS、WCS、シミュレーション、画像認識)まで、必要な要素を自社で網羅するMultiwayは、特定のヒット機種を何年も磨き続けてきたというより、「顧客の現場課題に合わせて、必要なハードとソフトを短期間で作り続け、一気に事業領域を広げてきた会社」といえる。

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重量物・高層ラック・コンテナ――用途特化で広がる無人フォークリフト

取材を進める中で特に目を引かれたのは、「既存の無人フォークリフト(AGF)」の枠に収まらない、用途に特化したハードウェア技術の幅広さだ。

① 8トンを載せて、回転し、横に動く「Oシリーズ」

――技術的な強みとして、どのような点がありますか。

一つは、重量物搬送と狭小スペースへの対応です。弊社の製品には、最大8トンクラスの搬送に対応できるモデル「Oシリーズ・全方向サイドフォーク型無人フォークリフト」には、360度方向への移動や「横方向」への斜行・平行移動が可能な車両があります。

通常のフォークリフトのように前後走行と旋回を繰り返すのではなく、限られたスペースで自在に移動できるよう設計されています。日本の工場や倉庫は必ずしも広くないため、使用する走行スペースを最小限に抑えられる点は、日本企業のニーズにもよく合っていると思います。

② 高さ16.5m。しかも通路幅は1.75mの「Kシリーズ」

――高層ラックへの入出庫にも対応しているのでしょうか。

はい。高い棚への入出庫に対応するモデル「Kシリーズ・3-way型無人フォークリフト」は、最大約16.5メートルの高さまで持ち上げることができます。

また、走行に必要な通路幅を約1.75メートルまで抑えられるモデルもあります。フォーク部分を180度回転・展開できる仕組みなどを採用することで、狭いスペースでも高密度な保管・入出庫を可能にしています。「搬送の自動化」だけでなく「保管効率の最大化」を同時に実現するアプローチです。

③ コンテナの中まで入っていく「Qシリーズ」

――他に特に特徴的な、開発の技術的な難易度が高いモデルはありますか?

例えば、トラックや海上コンテナの内部まで直接入っていき、無人で荷物を積み下ろしできる「Qシリーズ・バンボディ対応型無人フォークリフト」です。

コンテナ内部に進入する際には傾斜やスロープの段差がありますが、このモデルは最大約8.5度の傾斜に対応しています。一般的なウイング車への横付け積み下ろしに対応するAGFは増えていますが、コンテナの「奥」まで自律走行で進入して荷役を行う作業は技術的難易度が高く、弊社の強みとなっている部分です。

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本当の強みは「フォークリフトそのもの」ではない

豊富なハードウェアのラインアップから「ハードウェア技術の高い機械メーカー」という印象を受けるが、話を聞いていくと、同社の真の強みは車両単体にとどまらないことが分かってくる。

――ハードウェアと合わせて、制御システム側も自社開発されているのでしょうか。

はい。実際に工場や倉庫を無人化するためには、車両というハードウェアだけでは成り立ちません。

弊社のAGFを導入する際に核となるのが、自社開発の制御システム「RCS(Robot Control System)」です。RCSでは、マップ管理、最適な走行経路の計算、複数台のAGFの交通整理や群制御を行います。

その上で標準APIを提供しているため、お客様がすでに導入されているWMS(倉庫管理システム)やWCS(倉庫制御システム)、あるいは他社製のAMR、エレベーター、コンベヤ、自動シャッターなどの設備とも柔軟に接続できます。

特定のメーカーで固めるのではなく、お客様の既存環境を生かしながら「物流システム全体」を統合・最適化できるソフト技術こそが、弊社の土台にあります。

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すでに日本の大手製造業でも導入

Multiwayは、日本国内でも自動車、自動車部品、建機、住宅設備などの製造業で導入実績を持つ。世界では40カ国以上、累計1,000件超のプロジェクトを展開しており、自動車、新エネルギー、機械、食品、医薬品、3PLなど20以上の業界に広がっている。

単体のAGFだけを納入するのではなく、原材料置き場、生産ライン、完成品保管エリアをRCS・WMS・WCSでつなぎ、工場内物流全体を設計している点が特徴だ。

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人と同じ現場で動くための「安全設計」

――製造現場で無人フォークリフトを導入する際、性能と並んで重要になるのが安全性です。特に人や既存設備と同じ空間を走行する場合、周囲をどのように認識して回避しているのでしょうか。

弊社では、3D SLAMによるナビゲーションに加えて、ビジョンシステム、カメラ、LiDARなど複数のセンサーを組み合わせています。

これらを統合して周囲環境や障害物をリアルタイムに認識し、走行中の回避行動を行います。静止物だけでなく人が通行する場合も、安全エリアを動的に設定しながら回避することが可能です。

また、走行時だけでなく荷役作業そのものにもビジョン技術を活用しています。パレット位置の認識、バーコード識別、保管場所の検知、ピッキング位置や走行経路の補正を行い、荷物を「取る・運ぶ・置く」という一連の工程を正確に支援しています。

――単にSLAMだけで自律走行しているわけではないのですね。

その通りです。SLAMにビジョン、カメラ、LiDARを掛け合わせることで、有人環境下での高度な障害物回避を実現しています。

さらにハードウェア側の安全対策として、充電時の異常を検知してアラートを出す仕組みなども備えています。海外展開に必要な安全規格にも対応しており、欧州市場向けのCE認証も取得済みです。

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編集部コメント

無人フォークリフトというと「人が運転しなくなったフォークリフト」と捉えがちだが、実際には周囲認識、障害物回避、荷物の位置検出、走行制御、安全停止など、多数の機能が高度に連携して初めて有人環境での運用が成立する。Multiway Roboticsが単なる車両ハードウェアにとどまらず、ビジョン技術や制御ソフトウェアまで自社で一元開発・保有している理由も、この徹底した安全設計の思想から理解できる。

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「日本で不具合が起きたらどうしたらいいの?」への答え

海外製ロボットの導入を検討する際、日本の製造・物流企業が特に気にするのが「万が一の故障時に誰が対応するのか」というアフターサポートの問題だ。代理店任せで連絡が取れなくなるリスクを懸念し、導入を踏みとどまるケースも少なくない。

――日本国内でのサポートや運用体制はどのようになっているのでしょうか。

現在、日本法人には約10名のスタッフが常駐しています。営業だけでなく、技術コンサルタントやプロジェクトマネージャー、そして現場を担当するFAE(Field Application Engineer)といったエンジニアが日本国内に配置されています。東京オフィスに加え、埼玉にはデモ機で走行シミュレーションやマップ構築のテストができるショールームも設けています。

お客様から技術的な問合せがあった場合、最終的に対応するのは日本にいる弊社の正社員エンジニアです。日本語で直接コミュニケーションが取れますし、メールや電話で解決しないトラブルが発生した場合は、技術者が直接現場へ駆けつけます。基本的には「原則24時間以内のレスポンス」を徹底しています。

また、標準機だけでなく「特殊なクランプを付けたい」「フォークの厚みや幅を変えたい」といった個別カスタマイズにも対応しており、そうした特注仕様であっても発注から現地での立ち上げまで「約4ヶ月」という短納期で提供できる体制を整えています。

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なぜ、こんなにも製品開発が速いのか?

それにしても、なぜ設立からわずか6年でこれほど用途特化型の製品を次々と開発し、提供できるのか。その背景には、中国のロボット産業が置かれている競争環境がある。

――これほど多様な製品をハイスピードで開発できる理由は何でしょうか。

弊社の研究開発(R&D)チームは比較的若く、技術者の多くは30代〜40代前半が中心です。そして社内では、「常に毎年、新しい製品や改良モデルを出し続けること」が求められています。

中国国内には無人フォークリフトを手掛ける競合企業が多数存在しており、市場の変化と技術進化のスピードが極めて速いです。お客様から「こういう特殊なワークを運んでほしい」「この狭い通路を通したい」という新しい要求が出た際、それに素早く応える新製品を出せなければ、すぐに他社に追いつかれてしまいます。

「顧客の現場課題から新しい要求が生まれる」→「短期間で開発・製品化する」→「現場で鍛えられ、次の競争へ向かう」というサイクルが社内で定着していることが、弊社の開発スピードを支える要因です。

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【取材後記】競争環境が、製品を磨き続ける

今回の取材で特に印象に残ったのは、Multiway Roboticsの個々の製品スペックだけではなく、それらを次々と生み出している開発環境だった。

8トン級の重量物搬送、全方向移動、高さ16.5mの高層ラックへのアクセス、海上コンテナ内部への進入。さらに、WMSやRCS、WCS、ビジョンシステムまで含めたソフトウェア群。こうした製品・技術の圧倒的な幅広さを、数年で築き上げる成長力はすさまじい。

取材の中では、中国国内に無人フォークリフトを開発する企業が多数存在し、各社が継続的に新製品や改良モデルを投入しているという話があった。顧客からの新しい要求に対して即座に製品へ反映できなければ、あっという間に競合に追いつかれてしまう。そうした過酷な競争環境の中で、「現場の要求を拾う→開発する→実際の現場へ投入する→さらに改善する」というサイクルが超高速で回り続けている。

Multiway Roboticsの多角的な製品ラインアップを見ると、深圳をはじめとする中国ロボット産業の熾烈な競争環境が、製品性能や用途のバリエーション、開発スピードを磨き上げる強力な原動力になっていることがよく分かる。

RoboBridgeでは今後も、こうした企業への直接取材を通じて、単なる価格や表面上の製品スペックだけでは見えにくい、中国・深圳におけるロボット産業の真の競争力を追っていきたい。